大田区の穴守稲荷神社境内(大田区羽田5)で2月14日、早春の風物詩「江戸前・海苔(のり)作り体験」が開催された。主催は「楽しく自然から学ぼう!」をスローガンに、さまざまな自然体験活動を展開するNPO法人「地球野外塾」。
同企画は、1962(昭和37)年まで東京都の主要海産業の一つだった海苔作りを当時のままに再現し体験するというもので、今年で8回目の開催となる。
当日は2部構成で行われ、第1部では「海苔作り体験」と「自作海苔巻きの食事」を行った。海苔作り体験では、元海苔漁師の田村保さんに海苔切り・海苔つけ・海苔干しといった一連の作業を、産業最盛期当時の道具と工程で教わった。作業後は、最高級の海苔を使った海苔巻きを参加者自身で作り、ぜいたくな昼ご飯を満喫。食材を切る手伝いをして自分自身で巻いた海苔巻きを食べた参加者からは「今までで一番おいしかった」「市販の海苔と違い、味が濃厚」などと言った声が聞かれた。
第2部では「海苔作り最盛期の話を聞く座談会」と題して、田村さんから当時の海苔作りの創意工夫や様子を対話形式で学んだ。対話の中では参加者から「一番つらかったことは?」といった質問が挙がり、田村さんは当時を振り返りながら「寒風が吹く海に素手を突っ込んで海苔を採っていたので、かじかんで効かなくなった手を温めるために船べりに手を打ち当てたものだった。今思うと若かったからこそできた」と懐かしむように語り、最盛期の海産業風景を口伝した。
主催者の海老澤さんは同イベントについて「海苔に代表される日本の伝統食は、豊かな自然と厳しい手仕事の両方がそろって初めてできること。そのことを実際の体験を通じてこれからも子どもたちに伝えていきたい」と話す。