大田文化の森(大田区中央2)で10月26日、「歌声喫茶」の再現イベントが開催され、事前に応募した約120人の参加者が3時間にわたり懐かしの曲を合唱した。
同イベントはかつての「歌声喫茶」を再現し、仲間とともに心を満たす歌を歌うことの充実感や思い出を振り返ることが目的。大田文化の森協議会が主催した。
歌声喫茶は1955年ごろ~1970年ごろに流行した飲食店の一形態。歌唱指導者のもと、アコーディオンやピアノの伴奏で店内の客全員が一体となって歌を歌うことができた。曲はロシア民謡 ・唱歌・労働歌・反戦歌などが中心で、各店舗がオリジナルの歌集を作っていたという。新宿の「カチューシャ」「灯(ともしび)」などが有名で、最盛期には全国で150近くの店があった。
イベント参加者は、当時実際に歌声喫茶に足を運んだ年代の65歳以上が大半を占めた。同協議会事務局長の宗正雄さんの「当時の歌声喫茶を思い出して心の豊かさを取り戻し、癒やしの時間にしてもらいたい」というあいさつに始まり、3時間にわたり「赤とんぼ」「高校三年生」など47曲を全員で合唱。伴奏は区内を中心にボランティアで音楽活動をする「J&M」の伊藤淳子さんと田端真理子さんが担当した。
参加者の男性は「狭い店内で肩を寄せ合ってよく歌った。反戦歌やロシアの労働歌も多かったが、イデオロギーの主張ではなく仲間との気晴らしとして楽しんでいた」と当時を振り返った。仕事帰りに友人と新宿の歌声喫茶に頻繁に通ったという女性は、「曲を歌うと、当時を思い出して自然と涙が出てくる。このような素晴らしいイベントはぜひ定期的に開催してほしい」と話していた。
主催者によると、「今回が初めての開催だったが盛況に終えることができた。要望や状況をみて来年の開催も検討していきたい」という。