経済産業省は8月28日、水素エネルギーを効率的に利用する社会を目的とする国内初の大規模な社会システム実証を実施し、羽田空港~都心間に燃料電池バスの運行などを行うと発表した。
水素エネルギーは二酸化炭素を排出せず、エネルギーセキュリティーや環境対策の観点から重要な役割を担うものとして期待されている。同省はその普及のためには技術開発と併せて一般の人々への理解を促す取り組みが不可欠として、「二酸化炭素の排出が少ない水素製造」「効率的な水素等の輸送・貯蔵」「効率的な水素利用」を地域全体で実施・検証することを決め、事業実施者を公募していた。
同省が外部の有識者の意見などを踏まえて選定した事業者は、「水素供給・利用技術研究組合」(港区)と「佐賀県地域産業支援センター」(佐賀県佐賀市)。同組合は新日本石油や出光興産など13社で作る組織で、社会実証として羽田空港・成田空港と都心を結ぶ燃料電池自動車・燃料電池バスの運行を行う。燃料電池車の高速道路を使用する長距離定期運航は国内初。また福岡県北九州市では世界初となる水素パイプラインから一般家庭等への水素供給等も実施する。同センターは木質バイオマスや太陽光といった再生可能エネルギー資源など活用して、水素の製造・貯蔵・供給をすべて地域内で行う「地産地消型」の水素供給インフラの実証を実施する。
実証事業の予算は30億5,000万円。原則として今年度中に実施し将来のビジネスモデル化を検証した上でその後、国内の他地域での展開を検討していくという。